昔、四川では、元旦と15日に人々は神様と祖先を祀る習慣がありました。
「国家にご加護を、国と人民が平安で、心安らかに暮らし、仕事に勤しめますように、我々の家族が代々方禄をもらえ、人が増え一門が栄えますように」
君主や金持ちの家では、鶏や牛を潰しての盛大な儀式でした。
平民たちは豚肉を祀っていた
一般の平民百姓は大規模な祭事は出来ないため、身の丈に合った形で祀っていました。
「お母さん、どうして僕達の家は豚や羊を潰して、賑やかにご先祖様をお祀りしないの?」
「私達の家はそんなに裕福ではないから盛大に行うお金がないのよ。私達は“豚の外もも肉”を1塊買って帰って祀りましょう。」
「肉が煮えたわ。お父さんに祖先を祀る準備をしてもらいましょう。」
「祭事が終わったらお肉が食べられるね!」
「大丈夫よ。祭事が終わったらすぐに持ち帰ってお肉を炒めて食べさせてあげるからね。」
……農作物が沢山収穫できますように。……家のみんなが病気や怪我をしませんように。
お供えしたものを食べる
「この半生の“外もも肉”をどうやって子供に食べさせようか?醤油炒め?脂っこすぎるな。スープ煮?煮過ぎたら新鮮じゃないしな。肉を蒸す?半生だと味付けしにくいしな・・・」
「何を悩んでいるの?さっき洗ったニンニクの芽と炒めて食べましょうよ。」
「それならまず私が肉を薄く切ろう」
- 熱い鍋に少量の菜種油を入れて、自家製の豆板醤を炒めた後、切った肉を入れる。
- 最後にニンニクの芽を加えて、塩と少量の砂糖を鍋に入れてから皿に盛る。
- 金色の油でテカテカ艶のある、香り立つ肉炒めの一皿がついに完成。
「美味しい、美味しい!この炒め物は何という名前なの?」
「この料理は煮た“外もも肉”を鍋に戻した後に炒めるから、「回鍋肉(ホイコーロー)」と呼ぼう!」
先祖の祭事は毎日あるわけではないので、回鍋肉という料理はゆっくりと一般家庭に広まっていったと言われています。
時が経つとともに、回鍋肉の材料は変化し、多種多様な回鍋肉が生まれました。
鍋盔回鍋(小麦パンに回鍋肉を挟んで食べる回鍋肉)
土豆回鍋(ジャガイモの回鍋肉)
蓮白回鍋(キャベツの回鍋肉)
窩頭回鍋(円錐状の蒸し物の回鍋肉)
四川省の人で回鍋肉を作れない人はいない
今の四川の主婦は海鮮料理やスープが作れなくても、回鍋肉が作れない人はいない!と言われています。
各家庭で作られる回鍋肉は塩辛かったりあっさりだったり、あるいは甘かったりと、それぞれの特長があります。まさに回鍋肉は四川のソウルフードなのです。